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翌日、一樹は朝から友人二人に一緒に下校してもらう約束を取り付けた。
一樹はどうしてもシロを探したかったのだ。
友人たちには、昨日のことを全て話した上で、一緒にシロを探してもらう約束もできていた。
普段からいつも一緒にいる友達だから、一樹の願いも二つ返事で聞いてくれるのだ。
そして、ようやく退屈な授業が全て終わり、一樹は友人二人と公園に向かった。
まず、昨日シロがいた大きな樫の木に向かって一樹が走り出す。
二人の友人は、一樹を追いかけるようにその後について走る。
そして、三人は樫の木のもとにたどり着いたが、思っていたとおり、そこにシロの姿はない。
もしかしたら、シロはあの男に捕まって食べられてしまったのかもしれない、そう考えると、一樹はシロを置き去りにしてしまったことに対する後悔の念が胸一杯に押し寄せ、自然と涙が溢れ出す。
しかし、泣いていてもシロが見つかるわけではない。
一樹と二人の友人は必死にシロの名前を呼びながら、公園とその周辺を歩いて回る。
もちろん、三人は一樹が一人で歩き回ることには危険があると考えたため、一樹には必ず友人の内のどちらか一人が付き添っていた。
そうやって、二時間ほどシロを探し回ったのだが、それでもシロの鳴き声は聞こえてこない。
時間が過ぎれば過ぎるほど、一樹の心は何とも言えない不安感に支配され、勝手に涙が溢れ出しそうになる。
そんな一樹の心情とは裏腹に、時計は規則正しく時を刻み、無情に時間だけが過ぎてゆく。
そして、三時間ほど探し回っても結局シロは見つからず、三人は諦めて帰路につくこととした。
公園から一樹の家までは、歩いて二分とかからない。
まさに目と鼻の先なのだ。
さすがに公園から自宅まで友人に付いてきてもらうことも悪いと考えた一樹は、公園で二人の友人に手伝ってくれた礼を言い、別れを告げて、友人たちの姿が見えなくなるまでしっかりと見送ってから自宅へと向かった。
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