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「これが、最後の戦い」
静寂の中、呟かれた言葉は全軍に響き渡る。
つい出てしまった呟きなのに皆の心に深く、深く浸透し、奮い立たせる呪文となった。
しかし誰もそれを表には出さず、ただ眼前にて侵攻する人の軍勢を静かに、目に焼きつけようとした。
本当に、最後の戦い。
相手はただの人間ではなく皆が一流の戦士。
数にして10万。
その人の群れは圧巻であった。
足踏みを揃え一足歩けば地を揺るがし、まだ距離にすれば5㎞は離れているはずなのに恐れを感じるほどの恨み、憎しみの念。
そして彼等の真上で逆巻く巨大な魔力の渦がコレから始まる戦いの結末を物語っていた。
我等は触れてはいけないモノに触れてしまった。
直感でそう感じてしまう。
「しかし!」
「「「我等に敗北など無い!!」」」
考えること、感じることは皆一緒だった。
奴らを恐れているのに、量では圧倒的に負けているのに負ける気がしないのだ。
むしろ歓喜している。
これ程の戦いは過去にも未来にも二度と無いだろう。
例え死んで朽ちたとしても悔いは無い。
我等は異形の存在。
ネクロマンサー、ワーウルフ、ナイトキング、死霊の騎士、ヴァンパイア、アークデーモン、オーク、死神、ドラゴンなど人ならざるモノの集団。
人を糧とし、糧となる存在。
負けられない。
これは我らの存在を賭けた戦いなのだ。
魔物が人の上を行く存在であることを証明するための戦争。
我々の力は、魔力は、生命力は人とは比べ物にならない程に高い。
なのに勝利と敗北を繰り返し続けた忌まわしき過去を払拭するための戦い。
「借は返すぞ、人間共」
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