1月のお題『05 どっかで聞いた、その台詞』

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  「ーーー斎藤先輩、お待たせしてごめんなさい! 遅くなりました!」 「いや、構わない。 土方先生からの用事は終わったのか?」 「はい。 明日の授業の準備を少しだけ手伝っただけなので…。」 「そうか…では帰るとするか。」 スッ 「はい!」 ぎゅっ 「あの……斎藤先輩。」 「何だ?」 「その…さっきから空ばかり見ていますけど 何か考え事をされているのでしょうか?」 「別に考え事などしていないが…。」 「でしたらちゃんと前を向いて歩きましょう。 上を向いたままだと危ないですよ。」 「それもそうだが… そろそろ頃合いかと思って、な。」 「頃合い? 何か待っているのでしょうか?」 「そんなところだ。」 「むー…いまいちはっきりしないですね。 教えて下さい斎藤先輩。」 「………今にわかるだろう。」 「だから何が…」 「……来た。」 「え?」 はらり はらり 「わぁ…雪ですね。 この冬初めてです!」 「思った通りだったな。」 「思った通りって… 斎藤先輩は雪が降る瞬間がわかっていたのですか?」 「ああ、空の色と空気の移り変わりで大方の予想がつく。」 「それだけでわかるなんてすごいです! そうか、斎藤先輩は初雪が見たくて空を見上げてたのですね。」 「それもそうだが… ……最初に落ちてくる一粒を、 おまえと一緒に見たかった。」 「私とですか?」 「そうだ。」 ーーー俺達が生まれ変わるずっと昔のあの時と同じように…。 千鶴は前世の記憶を持ち合わせていないようだが俺はそれでも構わないーーー 「……綺麗ですね、すごく。」 「…おまえなら、 そう言ってくれると思った。」 ーーー例え記憶がなくともおまえは俺を愛してくれた。 そして俺もおまえを愛している。 それは昔も今もこれからも変わらないーーー 「不思議ですね…。」 「何がだ?」 「斎藤先輩と初雪を見たのはこれが初めてなのに… 何故か今の言葉を聞くのは初めてじゃない気がします。 まるでずっと昔にも聞いていたような…」 →そして想いは廻るんですね、わかります
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