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『一分でケリをつけたまえ』
小型通信機から、上司の声が聞こえる。
キラはとりあえず「了解」と応答した。
目の前には、訓練用に開発された、魔物を模したロボットがいる。
『グルルル……』
4本足の魔物はさながら、前世紀に存在していた『タイガー』を彷彿とさせる姿をしていた。
「さて…と、じゃあ行きますか!」
左手に持った銃――ライトガン――を握り、弾を放つ。
小さなビーム弾が、ロボットの足を破壊する。
『グォォォォ……ッッ!!』
ロボットはそれに構わずキラに飛び掛かる。
「好都合だ。
動く手間が省けた」
キラは右手に持った小剣――ショートブレイド――を構える。
『グアァァァッッ!!』
「終わりっ!!」
魔物ロボットがジャンプした瞬間、キラは屈みながら、ショートブレイドを振るった。
ロボットは頭から尻まで、真っ二つに斬り裂かれ、爆発する。
「終了しました」
小剣を肩に掛け、上司に通信を入れる。
『ふむ…、18秒。
なかなかの数値だな。
よし、今日の実戦訓練はここまでだ。
出てきたまえ』
「了解」と一言伝えて通信を切る。
タタミで言えば約30畳ほどの広さがある実戦訓練室を後にする。
「ふぅ~」
訓練室のすぐ側にある準備室に入り、自分のバックからタオルを持って汗を拭く。
動いたことによる汗ではない。恐怖による冷や汗だ。
いくらシュミレーションとはいえ、油断すれば大怪我を負う。
「もう終わったんですか。
貴方のことだから、もう少しかかると思っていたのに」
「相変わらず口がわりぃな。
『無事に戻ってきてくれて嬉しいです!』とか言ってくれりゃいいのに」
「その口に銃弾をぶち込んであげましょうか?」
キラはやれやれ、と苦笑した。
彼女はミカ。
キラとは馬が合わないのか、いつもいつも悪口を言っている。
だが腕は確かで、彼女はある程度の武器を使いこなすことができる、『天才』と言われるような人間だ。
「次はお前の番だろ?
頑張れよ」
「あなたに言われなくてもそのつもりです」
ミカは小剣と小銃を持ち、準備室を後にした。
残ったキラは一人、自分の小剣を研く。
「コイツは機械斬る道具じゃないんだっつーの」
悪態つきながら、研く。
砥石が少なくなってきたのを思い出したキラは、剣をその場に置いて、ショップに向かった。
時は2082年、今、人類は存亡の危機に陥っていた……。
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