信頼

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寮は男用と女用に別れている。 男寮から女寮にいくのはかなり規制が厳しいようだが、キラは特に興味無かった。 「ふぅ……」 一人一部屋で、トイレ、風呂は共用。 それなりに広いので、不便はない。 「2060年の2月、最初の魔物が記録される。 4月、魔物を一体、回収に成功。 以後、その魔物に『ゼロ-1』と名付ける…」 キラは以前に購入した文書を読んでいた。 『動物の人間に対する報復』 魔物は、動物の体内にある細胞が突然変異して産まれたと言われている。 だが、深くは書かれていない。 研究者達も、まだ全てを解明していない…と研究結果を公表していない。 「………ふぅ」 本を閉じた。 キラは、ベッドに横になる。 「やっぱり、なにかおかしい」 彼がカゲモリ隊に入ってから約2年、期間は短いが、彼はなにか、腑に落ちない点があると思っていた。 「どうするか…?」 信頼する人間に、話してみるか? ふと、ミカの顔が浮かんだ。 たしかに彼女を隊に入れたのはキラ自身だ。 だが、彼はその考えをすぐに打ち消した。 「アイツを巻き込むわけにはなぁ…」 コウキも同様だ。 友達だからこそ、こんなことを話すわけにはいかなかった。 他に信頼できる人間といえば……、 「隊長、かな?」 カゲモリ隊では上下関係がある。 キラ達はただの兵士である。 リュウキという隊長の一人を思い浮かべる。 なかなか厳しい人ではあるが、意見をきちんと聞いてくれる、いい人だ。 「さて、寝るか」 消灯し、眠りに落ちる。 この世界は、なにかおかしい。 魔物誕生のこと、カゲモリ隊結成のこと……。 すべてが謎に包まれているのだ。 キラは、自分がカゲモリ隊に入った時のことを夢に見ていた……。
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