過去

2/4
前へ
/32ページ
次へ
俺は15歳になる前に、カゲモリ隊に入隊した。 数世紀前の『徴兵令』を採用したらしい。 「俺は、今までの厳しい訓練に耐えてきたお前達を素晴らしいと思う! だが敢えて聞きたい! なぜお前達はここまで耐えてこれたのか!?」 リュウキ、と自己紹介をしたカゲモリ隊の隊長が叫ぶ。 5人の新人に、一人ずつ聞いて回る。 「私は、大切な人を魔物に殺されました。 仇討ちのため、日々精進してきましたっ!」 13歳の少女、レイナが答える。 メンバーの中では最年少だ。 「なるほど、頑張れよ! 次、お前だ!」 「俺は、故郷の両親に楽させるためっす! あと、そのついでにアニメを……」 キラと同じ歳であるコウキが、笑みを浮かべながら答える。 「親孝行しながら自分の趣味にも金を使う!実に結構! お前はどうだ!?」 キラの番がやってきた。 だが…、 「言えません」 一言、呟く。 場の空気が、重くなる。 「それを叶えるには、入らなきゃいけなかったのか?」 リュウキは自然に会話を続ける。 「はい」 頷く。 リュウキは腕を組んでため息をつく。 「いきなり隊長にケンカ売るなんて、なんて主人公格…!」 コウキは一人、勝手に興奮している。 レイナに睨まれ、縮こまる。 「よし、全員解散! 俺はコイツと話があるっ!」 リュウキは全員をその場から離れさせ、キラと二人きりになる。 「これで話せるか?」 「………」 キラは答えない。 リュウキはやれやれと首を振る。 「録音デバイスなんか持ってないぜ? それに、監視カメラもない。 そんなに話したくないなら、そう言ってくれ」 リュウキの言葉に、キラは躊躇いながらも、ついに口を開いた。 「俺の母親は科学者で、父親はカゲモリ隊の幹部でした」 淡々と語る。 表情を一つも変えることなく、続ける。 「母親は、数年前に死にました。 魔物が研究所を襲ったから、らしいです。 それなら仕方ない、と子供心に思いました。 しかし2年前、母の遺品を整理しているときに、ある書類を見つけたんです」 リュウキは口を出さず、黙って聞いていた。 「『魔物を作り出すことに成功した。 名前をゼロ-1と名付ける』と」 「ゼロ-1…だと」 最初にカゲモリ隊が捕獲に成功したと言われている魔物……。 キラは、その名前を口にした。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加