過去

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「……あんなバカみたいな夢、なんで今更」 目が覚めたキラは、寝起き早々に悪態をついた。 その少女を買い、『いつか必ず金は払うよ』とキラは言って、現在に至っている。 未だに金は払えていない。 一つの国の予算ほどの値段かよ、と当時に苦笑したのは、今となってはいい思い出だ。 それから彼女はキラと同じようにカゲモリ隊に入った。 今では隊長格になってもおかしくないほどの腕を持っている。 だが、彼女はずっとキラと同じ立ち位置にいる。 その理由は、キラにはわからなかった。 「………ふぅ」 ベッドから起き上がり、着替えをする。 ―――あの時、リュウキに言った、カゲモリ隊に入った理由。 たしかに間違いではないが、本当でもなかった。 彼の、カゲモリ隊に入った理由。 そして、今の彼の夢、それは……、 「今の日本政府を、ぶち壊す」 秘密を隠し続けている、今の日本を潰す。 それが…、彼の生きる目的だった……。 ―――そして現在、出動5分前。 「準備はいいか、野郎共!」 「野郎じゃないんですが」 ミカが冷静なツッコミを入れる。 その光景を、笑いながら眺めるキラ。 今回のメンバーは、キラ、ミカ、リュウキ、コウキ、レイナの5人だ。 この一週間は依頼が無かったのだが、久しぶりの出動になる。 「……じろじろ見ないで下さい」 キラの視線に気づいたのか、ミカが睨みながら呟いた。 キラは「はいはい、わるぅございました」と言って苦笑した。 今の彼女の瞳は、綺麗に輝いていた。 ――あの頃より、幸せなのだろうか? なら、いいか。 キラはそんなことを考えていた。 「さぁ……いくぜ!」 リュウキの声。 それに続いて、メンバー全員が足並みを揃え、依頼のあった町へと向かう。 これからなにが起ころうとも、ミカを傷つけるわけにはいかないと、キラは思った。 なぜなら……、 「アイツは、俺の所有物だからな」 いつに返せるかわからない借金を背負い、いつになったら叶えられるかわからない夢を抱き……、 今日も彼は、戦い続ける。
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