271人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前には携帯電話を耳に当て、大事そうに袋を持ってこっちを見ている華蓮がいた。
さっきまで走っていたのか少し息を切らしてるように見える。
リリリリリリ
俺の携帯が鳴った。
ははは…、俺に電話して走りながら捜してたのか。
これは、殴られる覚悟が必要かな。
目を瞑りどこから殴られても良いような体勢を構えた。
……………あれ?
いつまで経っても殴られる気配、ましてや華蓮がこっちに来ている気がしない。
ためしに目を開けてみると、俺が思った通りの事が起こった。
俺は無意識の内に走っていた。
途中、華蓮が落としたであろう袋を拾って。
なんでもっと早くギャルを追っ払わなかったんだ。
なんで華蓮を見たときすぐに華蓮の所に行かなかったんだ。
考えるだけで自分が華蓮にしたことに腹をたてた。
気が付いたら屋上以外全て捜した。
…後はここだけか。
ここにいなかったらどうしよう…。
最後の希望を信じて屋上に足を踏み入れた。
そして端っこで縮こまっている華蓮がいた。
『華蓮…』
最初のコメントを投稿しよう!