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6月末の風はすでに暑さを十分運んでくれていて
窓からときどき弱々しく吹いてくる風は窓際に座る僕の少しの安らぎだ
その安らぎのおかげか
正直、少し眠い
うとうとし始めている
…ダメだ
ほんわかと景色に意識を移していたのも悪かったみたいだ
僕は意識を切り替えるために
シャーペンを握りながら頬杖をついていた右手をノートの上に置いた
背筋を伸ばして黒板に視線を向ける
しかし
「河瀬」
「は、はい」
その瞬間、教師と目が合った
ボーっとしていたのを見られていたのか
それとも僕に授業の意見を求めているのか
どちらにしても
答えられないだろう僕の体は
冷や汗を瞬時に湧き出して、危険信号を全身に響かせていた
けれど
「そいつ起こしてやってくれないか」
教師は黒板の前から動くことなく、チョークで汚れた右の人差し指を僕の前の席に座る『そいつ』に面倒そうに向けた
「………あ、はい」
それで成り行きを理解した僕の心は、危険信号を一気に止めて、なんだと脱力した
そして言われるがまま
僕の前の席の彼を起こす
「おい、起きろ」
少し立ち上がり気味になってまで、肩をゆさゆさと揺らしてみたけど
「……ぐー…」
起きない
「おーい」
さらに背中を軽く叩いてみたけど
「……がー…」
起きない
「………」
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