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「何言ってんですか。ユズルさんみたいにモテたら選びたいほいだいなんだろーなって思っただけです」
「あぁ、うらやましいわけね」
なんだろ、なんかムカつく。
「でもな、好きな相手じゃなきゃ意味ないんだよ。何してもらってもさ」
ユズルさんはそう言ってタバコに火を点けた。
ふーっと煙を吐く。
ユズルさん、好きな人いるんだ。
しかも片思いかな、この様子だと。
なんとなくそれ以上突っ込んではいけない気がして話を逸らす。
「そういや、今日はどうしたんですか?」
「んー、なんとなく。マナトは当番?」
「はい、でも今んとこなんもないですが。」
「そうか、世の中は平和なんだな」
「それは違うと思いますけど」
俺とユズルさんが今いるのは、俺達の事務所。
俺達は世の中の平和を守る為働いている。
とはいっても、実はみんな本分は学生やフリーターだけど。
簡単に言うと少年探偵団。
犯罪の低年齢化に対処するため警察が秘密裏に組織したのが俺達。
一応上には捜査一課の警部以下数名がいて、必要に応じて彼らの捜査に協力するわけだ。
でも俺達自身はもちろん警察官じゃないしその特権もない。逮捕なんてできません。
あくまで後援部隊です。未成年だし、ちなみにみんなこの仕事のことは家族にも内緒です。
でもまぁ普段からそんなやたらめったら事件があるわけでもないし、警察の方で事足りてる場合が多いわけで、何もない日は当番で留守番。必要に応じて集合が掛かる。
でもって今週の当番はオレ。
で、この事務所は表向きは一応学力研究会って名前になってる。
未成年の俺達が出入りしてもおかしくないよう予備校を装ってるわけ。ユズルさんは窓を開けて煙草を吹かしながらぼーっとしている。
好きな人いるんだ。どんな人なんだろう。ユズルさんでも悩んだりするのかな。
オレはやっと自分の気持ちを自覚したところで、正直どうしたらいいか解らない。
ただあの人が好きだ。
この気持ちを認めたことで幾分楽にはなったけど。でも男を好きになるなんて。まだ混乱してる。
給湯室へ行き二人分のコーヒーを入れる。一つをユズルさんの前に差し出す。
窓際にもたれてたばこを吹かす姿が妙に絵なってる。
サンキュと言ってユズルさんが受け取る。
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