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アツキさんとは古い付き合いだ。
4年前、俺がよく行っていたライブハウスで知り合った。
アツキさんはそのライブハウスの手伝いをしてた。その時既にホストの仕事をしていたらしいけれど、俺はその頃そんなことは知らなかった。
やっぱりアツキさんのところに最初に来て正解だったな。
やばいっていいながらも、俺を心配してそれを言ってしまうんだから。やばいってことを漏らすのもやばいだろうに。あんまりお人好しだとこっちが心配になる。
アツキさんが入れてない薬。
わざと入れないのか、入って来ないのか。学生の間に出回ってるんなら手入らないもんじゃない。わざとか。
携帯を開く。
メールが来てる。着信も。
着信はタカヤさん。
メールは、藤原さんとタカヤさん。
藤原さんのメールをまず開く。
“くれぐれも気をつけろよ。”
俺が今日から廻るから、心配してくれたんだ。
俺達のことが解るような文言は禁止されているから、一言だけ。
俺は、ありがとうございますと返す。
次にタカヤさんのメールを開く。
“了解”のみ。こちらも簡潔。
俺が送ったメールも“応援頼めます?”だけだった。
電話とメールが同時刻。
電話にでなかったからメールね。
俺は次の目的地に向かうため歩きながらタカヤさんの携帯に掛ける。
「あい、こちら湾岸署」
タカヤさんの第一声。わざとおっさんくさい口調で出る。
「あー。すいません、間違えました。」
俺は電話を切る。
すぐに俺の携帯が鳴る。タカヤさんだ。
「こらこら、警察にはね、逆探知って技があるんだ。逃げても無駄だよ。」
逆探知じゃねーだろ、それ。
「で、なんだい、困っているのかな。」
タカヤさんは相変わらず、刑事さん口調。
「はい。知り合いのところに掛けたつもりの電話がなぜか湾岸署につながって困ってます。電話恐怖症になりそうです。」
俺は棒読みで言う。
「んー。それは困ったな。じゃあ、俺が助けに行ってやろう。で、どうしたらいいかな。」
まだ刑事さん口調。
「できたら学生のほうを当たって貰えるとありがたいですけど。」
湾岸署のノリは無視することにして、用件を伝える。
「ああ、それと、もし手に入ったとしても間違っても試してみたりしないように。」
俺は真剣な声で言う。
「・・・どういう意味だ。」
タカヤさんの声がいきなり真面目になる。
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