繋がり4

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「そのまんまです。詳しいことはわかりませんが、なんかあるっぽいので、確認がとれるまでは慎重にお願いします。俺はこれからまだ行くところがあるので今日はたぶん戻れないので。」 それだけ伝えて俺は電話を切る。追求されては困る。データソースを明かすことになれば アツキさんを危険に晒してしまう。 だから敢えて、やばいとか危険だという決定的な単語はさけて何かあると誤魔化した。 現にまだよくわからないし。 あと二件廻ったら、もう行かないと。 電車で4駅移動。 駅の西口を出る。東口と違いこちらは人通りも少なく、ひっそりとしている。 オフィス街の外れの方にガラス張りの巨大なビルが見える。大手アパレルメーカーの自社ビルだ。建物にでかでかとメーカーのロゴが書いてある。 そこを目指して歩く。俺が用があるのはそこではないけれど、その近くなのでいい目印になる。 建物大きいので、近そうに見えるがそうでもない。 歩くこと20分。小ぶりのテナントビルや貸しビル、アパートや事務所が建ち並ぶ一角。 煉瓦っぽい外壁の古臭いビルの4階にその店はある。 各階1店舗ずつ、2階と3階にも同じような店が入っているが、店内の様子はあまり見えない、窓やドアにブランド名と営業時間が書いてあり、洋服やカバンが並んでいるのでそれと解る程度だ。1階は何かの事務所の様で小売店ではなさそうだ。  今回は表から入る。黒いドアを開けて中に入る。外のイメージと違い中は明るく、シンプルで洗練された空間だ。奥のカウンターに人がいる。ブランド物のシャツやジャケットがきれいに並んでいて、テクノの様な音楽が流れている。レジカウンターに黒いスーツを着た女性の前に立つ。  俺を見てにこと笑う。営業スマイル。如何にもこういうところにいそうな雰囲気のある落ち着いた感じの大人の女性だ。髪をきれいにアップにしている。耳元にシャネルの大きなピアスが光る。 「いらっしゃい。」 俺だとわかってんのかな。 「どーも。」 俺はサングラスを下へずらして挨拶する。 「あれ?」 マリさんは俺を覗きこむ。 俺はポケットから2枚チケットを出して差し出す。 「今日時間あったら、来てくれませんか。」 マリさんはそれを手に取る。 「あー、歌うんだー、あれ、バンド変わったの?」 うれしそうな声を上げてくれる。
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