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「わかってますよ。ほんとにチケット渡しに来ただけなんで、ライブ来てくださいね。待ってますから。」
俺は店を出る。
“学生じゃないでしょ”っていったよな。学生がターゲットなのか。それに、俺の事学生じゃないと思ってるのか、まあ、そっちのが都合がいいけど。
アツキさんに読まれてたか。今度行ったら怒られるだろうな。
それから俺は、今日のライブのチケットを渡すように頼まれていた友人のところへ寄って、最後の目的地へ向かう。
途中寄った友人に話をふってみたが収穫なし。一人は学生じゃないし、もう一人は学生だが金持ちではないだろうし。自分でバイトして生活しているくらいなので、高価だという薬に手は出さないだろう。
駅を降りると、小さな商店街があって、その裏手にあるのが俺の目的の電機店。
店舗というよりは作業所だ。
正面のシャッターは下りている。シャッターにはマツダ電機と書かれている。親父さんの代からの店らしい。建物の脇に入口があるのを知っているので、そっちへ回る。窓から電気が付いているのが解る。
俺はサングラスを外して、ドアの横に付いている音符のマークの付いたボタンを押す。
ピンポーンと呼び出し音が鳴る。
中で何かがガタガタと動く音がする。
そして、ガチャっとドアが開きマツダさんが顔を出す。
おっという少し驚いた顔をする。
「なんだ、どうした。また壊れたか。」
いつも第一声はこのセリフ。口癖なのか、俺がいつも修理を持ち込むからか。
「はい、これ、なんとかならないかなって思って。」
俺はカバンからUSB型のメモリーを取り出して見せる。
まあ、入れと言って中へ入れてくれる。
俺はUSB型のメモリーをマツダさんに渡す。
「ファイルが開かなくなって困ってるんです。データ取りだせないですかね。」
入るとすぐに、小さな台所があってテーブルと椅子が置いてある。
その奥に作業場に続くドアと、もうひとつべつの部屋へ続くドアがある。
作業場へ続く方のドアは開いていて、廃品らしい電気製品が解体され乱雑に置かれているが見える。
俺は作業場が好きだ。がちゃがちゃに置かれた部品。使用時には見ることのできない、電化製品の内部が、露わになっていて見ていて面白い。
が、マツダさんは作業場ではなく、もう一方のドアを開けた。
ちょっと待ってろと、言って、入っていく。
「入ってもいいですか。」
俺は部屋の入口から声を掛ける。
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