繋がり4

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よく考えたら、着替えに行かずに来てしまったけど、まあ、いっか。 控室にはいると、みなが歓声を上げて迎えてくれる。一通り挨拶を交わして、リハーサル。 今日は俺はゲストなので、持ち歌1曲、メインのバンドの曲を1曲、ツインボーカルで一緒に3曲。そんなに出番はない。以前はよく一緒にイベントなんかをしていたので、リハーサルは問題なく終了。このところ歌っていなかったのもあって声が前ほど出ない。 本番前にもう少し喉を温めよう。 俺は一人になれる場所を探して、2階へ。 2階は事務所と、練習用の小さな個室が2つある。両方とも使用中だ。 ガラス窓が付いているので、手前の方を覗くとよく知っている奴だ。ギターを弾いてる。 ガラス窓から手を振って合図をする。 気が付いたので、中へ入る。 「久しぶり。」 「ああ、今日来るっていうから楽しみにしてたよ。元気だったか。」 「元気、元気。ちょっと声だしさせて。」 「ああ、どーぞ。時間潰してるだけだから。」 喉を温めて、本番。 わっと沸く客席の歓声に気持ちが高ぶる。 客席の熱気に煽られて、俺の喉もよく響いてくれる。俺の事を知っているお客さんが名前を呼ぶのが聞こえる。一人一人に届くように声を鳴らす。最高の気分。歌うのが好きだ。 歓声に酔う。もっと、歌いたい。ステージに立つといつもそう思う。 客席の一番後ろにマリさんが立っているのが見えた。小さなライブハウスなので、一番後ろまで見通せる。 出番がすべて終わったので、マリさんのところへ行く。 「マリさん。来てくれたんですね。」 「うん。よかったよ。久々にマナトくんの美声聞けた。」 うれしそうに言ってくれる。 こういうことを言ってもらえると、また歌おうと思える。 「ありがとうございます。ひさびさだったんで、ちょっと聞き苦しかったかもしれないですけど、練習不足ですね。すみません。」 「そんなことないよ。でもまた前みたいにもっと歌えばいいのに。」 「そうですね。考えてはいるんですけど。」 「うん、期待してる。・・・・アツキから連絡あったよ。心配してた。」 「大丈夫ですって。ほんとに手出してないですし、出す気もありません。すみません、心配させてしまって。アツキさんにもそう言っておいてください。俺もまた近いうちに顔出しておきますよ。・・・それにしても、そんなやばいんですね。」 マリさんの表情を窺う。マリさんは何も言わずに、頷くだけ。
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