繋がり5

3/13

450人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
俺は手早く着替える。 鞄から眼鏡を取り出して、掛ける。 前髪の分け目を変えて、一応変装。 「どうですか。」 俺はユズルさんのほうを向いて、めがねに手を掛けてクイッと上げて見せる。 ユズルさんは上から下まで俺を見回して、うん、と頷くとグーのサインを出す。 よし、準備オッケー。 携帯を出してタカヤさんに連絡。 “何時頃ですか” 俺は、鞄の荷物を詰め変える。 「で、どう?」 「まだ全然。普通のドラッグではないみたいです。」 「どういうこと?」 「なんか、ルートが違うとか。」 「へえ。」 俺の携帯が鳴る。 タカヤさんから返信、“8時くらい” 「タカヤさん夜ですね。俺、出ていいですか。」 「どーぞ」 「じゃ、いってきます。」 「はい、いってらっしゃい。」 事務所から電車で20分ほどのところにある予備校街を目指す。 目的地をぶらつく、進学校の学生がちらほら。まだピークじゃないのか。 あまり面がわれても困るので、通りから外れる。 コンビニでジュースを買って飲みながら、時間を潰す場所を探して歩く。 この辺ってあまり来たことがないので、新鮮だ。 しばらくぶらついていると、前方の白い建物からN高の女子が出てくるのが目見入る。 ダッシュ。 俺は、彼女が出て来た手前の横断歩道の信号が点滅し始めたのを見て走る。 間一髪、信号が変わるのと同時に渡りきった。 そのまま、彼女が出てきた建物に走る。 うっかり、彼女にぶつかってしまう。 彼女が手に持っていたビニール袋を落とす。 「あ、ごめんっ。」 俺は慌てて落ちた袋に手を伸ばす。 ビニール袋からは薬の説明らしい紙と調剤薬の袋が覗く。 拾い上げて渡す。 「ごめん、俺、急いでて大丈夫?」 「いえ、大丈夫です。」 彼女は袋を受け取って俺をみる。 自分の出てきた建物を見あげる。 「ここに通ってるの?」 「え、ああ、まあ。」 「そう」 そう言うと彼女は行ってしまった。 俺は彼女が見上げた建物を同じように見上げる。三階建の白い壁の建物。あまりあたらしくはなく、看板の類は出ていない。 とりあえず中に入ってみる。 一階は暗く、閉まっているようだ。 脇にある階段を登る。 階段を登りきると、診療中と書いた看板が立っていた。 クリニックか。 だが、診療科は書いていない。自由診療?
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加