繋がり5

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人の気配はしない、静かだ。 すりガラスのドアの向こうに明かりが付いてるが、人影は見えない。 とりあえず、三階にも上がってみようと、上がりかけた視線の先の踊り場に、立ち入り禁止のプレートとチェーン。 上は事務所か。 俺は一応あたりをそれとなくカメラなんかがないか、確認してチェーンを超えて、上へ行く。 三階は一階と同じで電気は付いていない。 ドアも磨りガラスになっていないので、中の様子はわからない。 ドアに耳を宛てる。物音はしない。 ドアのノブをゆっくりと回してみる。 だめだ、鍵が掛っている。 しまったな、ピッキングツールは今日は持ってない。 ほんとは、いくら俺たちの仕事だからってピッキングは許されてない。 俺は諦めて階段を下りる。三階へ向かう階段に腰掛けて姿を隠し、人が来るのを待つ。 さっき俺がぶつかった子は、ここの患者だ。目が赤かったな、あの子。 薬の内容はあまり見えなかったけれど、たぶん精神科とか神経科だ。 携帯を出して時間を確認。 6時前、診療の受付時間が終わるころかもしれない。 しばらく待ってみたけれど、誰も来ないので建物を出る。 俺は、予備校のとおりに戻って、目ぼしいグループの近くで、耳をそばだててみたりする。 会話の内容は、宿題や勉強、進学率、テレビゲームの攻略。 勉強好きな奴ってのは、頭を使うことしか考えてないんだな。 何グループか回ったが収穫なし。 なかなか、難しい。 声を掛けないと難しいかな。声を掛けるとなると、相手を慎重に選ばなければ。 あたりを物色するが、目ぼしい相手はいない。こういう時は焦っても仕方がない。 とりあえず、今日は情収集ってことで、辺りの学生の会話をチェック。 タカヤさんが事務所に来るころには、俺も戻らなくては。 7時、帰っていく学生のグループにについて電車に乗る。 育ちのよさそうな男子3人。講師の悪口を言っている。笑ってしまいそうになるのを堪える。人の話を盗み聴きするってのはそんなに楽しいものではないが、たまに笑える。
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