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俺は思わず笑ってしまった。
「なんですか、それは。」
「よくわからん。でも、そういうイメージだ。わかりそうでわからん。一見単純そうに見えて、実はそうじゃない。人当たりがいいくせに、壁がある。」
けっこう当たってるかも。
「みんなそんなもんでしょう?タカヤさんだって俺からみたら不思議ですよ。」
「俺のどこが?」
どうしてそれだけの頭脳があってあの大学に行っているのか、なぜまだここに留まっているのか、とか。ぜひ訊いてみたいところですが。
「さあ、全体的に、存在が。」
「なにそれ。俺そんなこと言われたことねぇぞ。」
俺はタカヤさんに差し出していた手を引く。
引こうとした手が掴まれる。
掴まれた手を引き寄せられる。
タカヤさんが座ったまま俺を見上げる。
その目はいつになく真剣。
この人のこんな顔なかなかみられないな、と俺はのんきにそんなことを思った。
「どういう風にみえる?俺の事。」
「だから・・・なんの目的があるのか、とか。」
「目的?」
「なんていうか・・・」
あなたはどこか俺に、似てるのかも。
言うべきか迷う。
ガチャっとドアが開く。
俺はドアのほうを見る。
「あ、藤原さん。」
「何してんだ。」
「何って・・・。」
俺はタカヤさんを見る。
「マナトが爪に色なんか塗ってるから見てたんですよ。」
タカヤさんは掴んでいた俺の手を藤原さんに見せる。
「なんだそれ。」
「ネイルです。」
「なんでそんなもんしてんだ。」
「お洒落ですけど。」
「若者のすることは解らん。」
「おっさんみたいなこと言わないでくださいよ。」
俺は思わずつっこみを入れる。
「おっさんだよ。」
タカヤさんがすかさず言う。
藤原さんが渋い顔をする。
「で、なんかわかったか。」
「いえ、あんまり。どうもちょっと今までとは違うみたいですよ。そんなに出回ってるわけでもなさそうですし。」
「俺たちが首突っ込んでどうこうなるもんでもなさそうだけど。」
タカヤさんが付け加える。
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