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叶わない、と自分を誤魔化して諦めようとした。けど、無理だった。
だから、諦めるのは諦めた。
好きでいよう。勝手に好きでいればいい。
そう決めると、気持ちも落ち着いていたはず。
しかし、やはり気持ちに動かされてここへ来てしまった。
窓の外を見ながら、はぁっとため息をつく。
行き場のない思い。
ドアが開く音がして人が入って来る。
「ユズル」
名前を呼ばれた声に驚き、びくっとした。
マナトが戻ったのだと思い気を抜いていた。
振り返ることができない。
「ユズル?」
肩をそっと掴まれる。
仕方なく振り返る。
「あぁ、悪い。ぼーっとして…」
振り返ったところに、タカヤ顔。
びっくりして固まる。
タカヤは眉間にシワを寄せている。すぐに返事をしなかったのが気に入らなかったのか。
タカヤがオレから顔を離す。
「お前いつも気抜きすぎ、後ろから刺されっぞ」
「後ろから刺されるような覚えないよ」
「そうかー?せっかくの手作りプレゼントを人に食べさせてんのに?」
タカヤが机の上のクッキーを眺める。
「お前に言われたくないね。」
タカヤは背が高く端正な顔立ちに切れ長の目、短髪。引き締まった体躯。
落ち着いた雰囲気で人気がある。
女癖がいいほうではなくしょっちゅう二股だのでもめているが、いっこうに懲りた様子はない。
こんなヤツにとやかく言われる覚えはない。
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