迷う心1

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今まで何人かと付き合ってきた。結構マジに恋愛をしたことだってある。でも、こんな風に身を焦がしたことは、ない。 身を焦がすような恋って、あるんだなっと実感した。 叶わないからだ、きっと。手に入らないと解っているから、渇望する。 店の外を行き交う人達が小走りになる。 窓ガラスにポツポツと雨粒の跡がつき始める。 あの日も雨が降ってた。 いきなり夕立に見舞われて、びしょ濡れになって大慌てで事務所へ駆け込んだ。 「うわー、パンツまでぐっしょりだ。」 「さむっ、シャワー浴びねえと風邪ひくぞ。」 俺は雨にぬれた頭を振る。 「先使っていいぞ。」 「いいの?」 「おぅ、俺寒くねえし。」 「サンキュ。」 シャワーへ向かおうとする俺は、ぐいっと引っ張られた。 「、、、っ」 一瞬何が起こったのか解らなかった。 いきなり、キスされた。 ゆっくりと唇が離れて、また重なる。 今度は唇が割られて、舌が絡まってくる。 「、、、んっ」 ・・・感じてしまった。 俺を解放したタカヤは珍しいものを見るように俺の様子を窺う。 「大丈夫か?ユズル。」 俺は固まったまま思考が回復しない。 「ごめん、水も滴るイイ男だったから、つい。・・・おい。ユズル?」 俺の顔の前で手をひらひらさせる。 「え、あ、ああ、そうだな、びっくりした。やめろよ、はは。」 俺はなんとか笑って返し、シャワーへ向かう。 びっくりした。怒る余裕もなかった。 なんなんだ、まだ心臓が・・・。
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