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今まで何人かと付き合ってきた。結構マジに恋愛をしたことだってある。でも、こんな風に身を焦がしたことは、ない。
身を焦がすような恋って、あるんだなっと実感した。
叶わないからだ、きっと。手に入らないと解っているから、渇望する。
店の外を行き交う人達が小走りになる。
窓ガラスにポツポツと雨粒の跡がつき始める。
あの日も雨が降ってた。
いきなり夕立に見舞われて、びしょ濡れになって大慌てで事務所へ駆け込んだ。
「うわー、パンツまでぐっしょりだ。」
「さむっ、シャワー浴びねえと風邪ひくぞ。」
俺は雨にぬれた頭を振る。
「先使っていいぞ。」
「いいの?」
「おぅ、俺寒くねえし。」
「サンキュ。」
シャワーへ向かおうとする俺は、ぐいっと引っ張られた。
「、、、っ」
一瞬何が起こったのか解らなかった。
いきなり、キスされた。
ゆっくりと唇が離れて、また重なる。
今度は唇が割られて、舌が絡まってくる。
「、、、んっ」
・・・感じてしまった。
俺を解放したタカヤは珍しいものを見るように俺の様子を窺う。
「大丈夫か?ユズル。」
俺は固まったまま思考が回復しない。
「ごめん、水も滴るイイ男だったから、つい。・・・おい。ユズル?」
俺の顔の前で手をひらひらさせる。
「え、あ、ああ、そうだな、びっくりした。やめろよ、はは。」
俺はなんとか笑って返し、シャワーへ向かう。
びっくりした。怒る余裕もなかった。
なんなんだ、まだ心臓が・・・。
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