迷う心1

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その後も調査を続けるが、目ぼしいものは見つからない。 調査の停止連絡はないので、毎日ゲームソフト店をうろつく。 メールの着信。 タカヤからだ。 “応援に行く、いまどこ?” 応援?聞いてない。 どうしよう。 とりあえず俺は現在地を返信。 まあ、元々はタカヤの案件だったんだし、助かるけれどマナトの方はどうしたんだろう。終わったのか。 1時間ほどでしてタカヤが現れる。 タカヤもいつもとはちょっと違う服装をしている。掛けている眼鏡が似合ってなくて笑える。 「なんだよ。」 「いや、似合ってるよ。」 「お前だって。」 タカヤも俺をみてぷっと吹き出す。 「で、どう?」 「ぜんぜん」 「だろうな。ちょっと出よう。」 話があるらしく店の外へ出る。 近くにあった小さな公園のベンチに座る。 タカヤがたばこに火を付ける。 俺もたばこを取り出す。 「一旦警察が入ってんだ、そうそう尻尾はださねえだろ。」 「だよな。お前、藤原さんに言われて来たの?」 タカヤは首を振る。 「ひとりじゃ大変だろと思ってな。もともと俺の案件だしな。気になってさ。」 こういうところ、こいつは手を抜かないというか責任感が強い。 「でも、ぜんぜん学生いなかったな、前はけっこういたのに、やっぱ嫌煙してんかな。」 「そうなのか、確かに学生はほとんど見ないな。まあ、制服来てないってだけってのもいるだろうけど。」 俺はこの数日回った店の客を思い出す。若いのも、いたな。 学生か、タカヤはもう大学生だ。そろそろ引退してもいいころで、前に居たユミさんは高校卒業と同時に引退した。ほとんどの人が高校卒業かそれか、長くても二十歳で引退する。 タカヤは留まってるってことは、二十歳引退かな。 俺としてはできるだけ長くいてほしい。 タカヤが引退したら、もう会えなくなる。 俺たちを繋ぐものがなくなる。 そうしたら、俺は諦めがつくのだろうか。 心のどこかで、そうなったら楽になれると考えてしまう一方でもう一つの可能性が浮かぶ。 会えなくなってもこの気持ちは消えない、さらに辛くなるだろう。 「ん?」 タカヤが俺を見る。 そんなことを考えながらついタカヤを見つめてしまっていた。 俺は慌てて首を振る。 「なんでもない・・・」 「なんだよ。」 タカヤがにやりと笑う。 「はぁ?」 なんだその反応は。
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