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「俺に見惚れてたな。」
う。
図星。
「んなわけねーだろ、気色悪い。」
タカヤは、ははっと楽しそうに笑う。
「なんか悩んでんなら聴いてやるぞ~」
「え。」
「俺一応年上だしな。おまえ忘れてるだろ、俺がお兄さんだってこと。」
確かに。普段こいつのことを年上と思ったことはないけど。
「ああ、忘れてた。」
「やっぱり」
「なんだよ、年上扱いしてほしいのか。」
「そうじゃねえけど、頼ってもいいぞってこと。一つくらいの歳の差なんてって思うだろうけどな、一年ってけっこういろんなことできるんだぞ。だから、一年分はお前より経験豊富なんだよ。」
確かに、みんな1年があっという間だと言うけれど、その1年でいろいろあっていろいろ変わって成長してるのかも。
タカヤ、そんなこと考えてんだ。
やっぱりこいつ、見た目よかいろいろ考えてんだな。
俺は頷く。
「困ったら、頼むわ。」
タカヤが意外そうな顔をする。俺が素直に首肯すると思わなかったようだ。
「お、なんかかわいいな、お前。いつもそんくらい素直だといいのに。」
かわいいと言われて思わず赤面する。
駄目だ。
「マナトの件は?どうなった?」
俺はなんとか誤魔化そうと話題を変える。
「え。ああ、一応続いてるよ。でも、俺達の手に負えるもんじゃなさそうだ。こっちへ下す段階でもかなり迷ったらしい。なんか、キナ臭い。」
「そうか。そうだよな、今さら薬って。」
「うん。」
タカヤはベンチから立ち上がる。
「ユズル、お前進路決めたか?」
「え?」
いきなり関係ないところへ話が飛んだので、話の真意が見えない。
「大学進学、すんの?」
「ああっと、たぶん。」
「じゃあ、残れよ。」
「え。」
「俺みたいに。学生なら続けられるだろ。まあ、大学によるだろうけど。」
思いがけないオファー。
当初は高校卒業と同時に辞める予定でいた。けれど、今となっては、正直迷っていた。
「なんで?」
「なんでって、残ってほしいから。」
その一言が、俺を舞い上がらせる。うれしい。タカヤがそんなことを言うとは思わなった。
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