迷う心1

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「俺に見惚れてたな。」 う。 図星。 「んなわけねーだろ、気色悪い。」 タカヤは、ははっと楽しそうに笑う。 「なんか悩んでんなら聴いてやるぞ~」 「え。」 「俺一応年上だしな。おまえ忘れてるだろ、俺がお兄さんだってこと。」 確かに。普段こいつのことを年上と思ったことはないけど。 「ああ、忘れてた。」 「やっぱり」 「なんだよ、年上扱いしてほしいのか。」 「そうじゃねえけど、頼ってもいいぞってこと。一つくらいの歳の差なんてって思うだろうけどな、一年ってけっこういろんなことできるんだぞ。だから、一年分はお前より経験豊富なんだよ。」 確かに、みんな1年があっという間だと言うけれど、その1年でいろいろあっていろいろ変わって成長してるのかも。 タカヤ、そんなこと考えてんだ。 やっぱりこいつ、見た目よかいろいろ考えてんだな。 俺は頷く。 「困ったら、頼むわ。」 タカヤが意外そうな顔をする。俺が素直に首肯すると思わなかったようだ。 「お、なんかかわいいな、お前。いつもそんくらい素直だといいのに。」 かわいいと言われて思わず赤面する。 駄目だ。 「マナトの件は?どうなった?」 俺はなんとか誤魔化そうと話題を変える。 「え。ああ、一応続いてるよ。でも、俺達の手に負えるもんじゃなさそうだ。こっちへ下す段階でもかなり迷ったらしい。なんか、キナ臭い。」 「そうか。そうだよな、今さら薬って。」 「うん。」 タカヤはベンチから立ち上がる。 「ユズル、お前進路決めたか?」 「え?」 いきなり関係ないところへ話が飛んだので、話の真意が見えない。 「大学進学、すんの?」 「ああっと、たぶん。」 「じゃあ、残れよ。」 「え。」 「俺みたいに。学生なら続けられるだろ。まあ、大学によるだろうけど。」 思いがけないオファー。 当初は高校卒業と同時に辞める予定でいた。けれど、今となっては、正直迷っていた。 「なんで?」 「なんでって、残ってほしいから。」 その一言が、俺を舞い上がらせる。うれしい。タカヤがそんなことを言うとは思わなった。
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