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「ほら、最近けっこういい感じに回ってるし。お前と俺とマナト。三人とも経験が伴ってきただろ。この前藤原さんと話してたんだ。」
「藤原さんと?」
俺は藤原さんとマナトのことを思い出す。
タカヤに話してみようか。
「ああ、俺たちのチーム。今俺達三人が主力だって知ってた?」
「え、そうなの?」
「ああ、他も動いてるけど、重要なのは全部俺達三人に回ってきてる。」
「全然、知らなかった。」
「お前さ、俺たちのやってることがなんなのか、気にならないか。本来なら未成年使って捜査の真似事させるなんてありえないだろ。」
タカヤの表情は真剣。
そりゃ、そうなんだけど、そんなことは承知の上で入ったわけだし。
「どういうこと?なんかあんのか?」
「うん、いろいろな。お前高校生だからまだ話せないけどさ。長くいるといろいろ見えてくる。」
長くって言っても、たった1年だろ。
そう思ってすぐ、1年ってけっこういろんなことができると言ったタカヤの言葉が胸を刺す。
タカヤには俺には見ていないものが見えてる。
タカヤの見ているもの。外見とは裏腹に思慮深く聡明なこの男が見ているもの。
俺が自分の気持ちに振り回されて悶々としている間、タカヤは自分を取り巻く世界を見通そうとしている。
急に自分がとても小さな人間になったように思える。
なにやってんだ、俺。
実際、進路も迷ってるし、このチームに残るかどうかも迷ってる。
将来も見えていない。
それから一緒に数件回って、帰った。
家に帰ってからも、タカヤのあの真剣な表情が頭から離れず、俺を責める。
俺にあんな表情ができるだろうか。
タカヤがすごく大人に見えた。
一歳しか違わないのに。
1年の差。
いままで気にしたこともなかったのに、いきなり大きな隔たりが出来てしまったような気分だ。
俺に残れと言ってくれたことのうれしさもそれに上塗りされてしまう。
俺って、何も考えてねぇな。タカヤの事以外なにも。
タカヤと俺とマナト、タカヤが一つ上で、マナトが一つ下。ってことは、俺はマナトよりは経験豊富?
でもない、気がする。
マナトはなんていうか、かわいい顔してっけど、あいつはなんか違う・・・今まで気が付かなかったけれど、あいつとタカヤ、同じ匂いがする。
肩を抱かれたマナトがうれしそうに藤原さんを見る笑顔、その顔がタカヤにすり替わる。
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