迷う心2

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「まあ、いつも上手く切り抜けて来てるみたいだけど。」 「そうなんだ。」 「でも、今回の件はやばいんじゃないのか。」 「そうだな。今度釘刺しとかないと。」 タカヤは顔をしかめている。 藤原さんが付いてるから大丈夫だろうけど。 タカヤには二人のこと言うべきじゃないよな。 「マナトってあんま家に帰らないよな。当番だとずっと事務所に居ないか。」 タカヤが続ける。 「ああ、たぶん家が複雑なんだよ。」 俺は前から感じていたことを伝える。 「へえ。誰にきいた?」 「いや、なんとなく雰囲気で。」 「この前爪に色塗ってた。」 「色?」 「ああ、あと飾りも付いてた。」 ? なんのことだ? 「ネイルの事か?」 当てずっぽうで答える。 「ああ、それそれ。」 「おっさんかよ、お前。あいつ歌うから。」 俺は思わず噴き出す。 「歌う?」 「そう、歌上手いらしいよ。」 「それと爪がなんか関係あんのか。」 「ライブとかステージに立ってんだよ。」 「まじで?」 「うん、たぶんな。俺も詮索したくねぇから、たまたま人から聞いた話だけど地元じゃちょっと有名らしいよ。」 「そんな風にみえねぇな。」 「うん、でもちょっと独特の雰囲気があるよな。」 「ああ、それ。そうなんだ。あいつ、なんか変わってるよな。」 マナトに興味があるのか。 「珍しいな。お前が人に興味を持つなんて。」 「え?」 タカヤが驚いて俺の顔を見る。 「自覚してないのか?」 「いや、別に、そういうんじゃ。ただちょっと。」 明らかに動揺してる。 こいつは思慮深い、他人の事もよく見てる。けれど、興味を持っているかと言うとそうじゃない。たいてい傍観しているだけだ。 「お前こそ、マナトのことよく知ってんじゃねぇか。」 「そうか?」 「ああ、興味持ってんのはお前の方じゃないのか?」 「俺が?なんで?」 自分より俺の方がマナトのことを知ってるのが気に食わないか。 「知らねえよそんなこと。」 タカヤの動揺する姿なんて初めて見た。 笑える。 マナトのことで動揺するとは。
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