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「まあ、いつも上手く切り抜けて来てるみたいだけど。」
「そうなんだ。」
「でも、今回の件はやばいんじゃないのか。」
「そうだな。今度釘刺しとかないと。」
タカヤは顔をしかめている。
藤原さんが付いてるから大丈夫だろうけど。
タカヤには二人のこと言うべきじゃないよな。
「マナトってあんま家に帰らないよな。当番だとずっと事務所に居ないか。」
タカヤが続ける。
「ああ、たぶん家が複雑なんだよ。」
俺は前から感じていたことを伝える。
「へえ。誰にきいた?」
「いや、なんとなく雰囲気で。」
「この前爪に色塗ってた。」
「色?」
「ああ、あと飾りも付いてた。」
?
なんのことだ?
「ネイルの事か?」
当てずっぽうで答える。
「ああ、それそれ。」
「おっさんかよ、お前。あいつ歌うから。」
俺は思わず噴き出す。
「歌う?」
「そう、歌上手いらしいよ。」
「それと爪がなんか関係あんのか。」
「ライブとかステージに立ってんだよ。」
「まじで?」
「うん、たぶんな。俺も詮索したくねぇから、たまたま人から聞いた話だけど地元じゃちょっと有名らしいよ。」
「そんな風にみえねぇな。」
「うん、でもちょっと独特の雰囲気があるよな。」
「ああ、それ。そうなんだ。あいつ、なんか変わってるよな。」
マナトに興味があるのか。
「珍しいな。お前が人に興味を持つなんて。」
「え?」
タカヤが驚いて俺の顔を見る。
「自覚してないのか?」
「いや、別に、そういうんじゃ。ただちょっと。」
明らかに動揺してる。
こいつは思慮深い、他人の事もよく見てる。けれど、興味を持っているかと言うとそうじゃない。たいてい傍観しているだけだ。
「お前こそ、マナトのことよく知ってんじゃねぇか。」
「そうか?」
「ああ、興味持ってんのはお前の方じゃないのか?」
「俺が?なんで?」
自分より俺の方がマナトのことを知ってるのが気に食わないか。
「知らねえよそんなこと。」
タカヤの動揺する姿なんて初めて見た。
笑える。
マナトのことで動揺するとは。
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