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けど、タカヤ。マナトは藤原のもんだぞ。
「っていうか、お前が変な言い方すんなよ。なんか焦っちまった。」
「焦ってるお前なんか初めてみたよ。」
「だろ。俺もびっくりしたよ。」
「あほか。」
どういういい訳だ。
「そういや、考えたか?」
「ん?」
「残るかどうか。」
「ああ、まだ考え中。」
「なんだよ。何が不満だ。」
「んー、お前が言う通り危ないし。ここらで足洗った方がいいかなって。もともと高校生の間だけのつもりだったしな。」
「でも、まだ考えてるってことは脈ありだな。」
俺は答えない。
「残ればマナトに会えるぞ。」
「いやいや。餌になってねえって。」
「俺にも会える。」
「もっとなってねえ。」
「だよな、うーん。」
タカヤは考え込む。
鈍感。
気付くはずないか。隠してるんだから。
俺はお前が居るから迷ってるんだよ。
お前に会いたいから。
お前は俺が辞めたらもう会ってくれないのか。
メンバーじゃない俺には興味がないのか。
タカヤは俺の心をよそにさらに続ける。
「じゃあ、なんでここに入った?」
「正義感。」
「だよな。たぶん、みんなそうだ。」
「そうじゃない奴はやる気があっても省かれてるよ。」
そう、最初にふるいに掛けられる。
警官は人を見抜くプロだ。数人の面接を経て俺達はメンバー入りする。
もちろん正義感だけでは入れない、けれど正義感のないものは入れない。
詳しい規定はもちろん知らないけれど、正義感の持ち主であることは俺達メンバーに共通している。
「うん。じゃあ、もう少し続けてみようか。」
「考えとくよ。」
「なんでだよ。乗ってこいよ。」
「お前が見てるものの中に俺が望むものがあるとは限らないだろう。」
「自分の価値観を押し付けるなってか?」
「そうじゃ、ない。」
いや、そうだ。
タカヤが好きだ。
けれど、タカヤの目指すものに俺が付いていける自信がない。
もちろんメンバーになった正義感は嘘じゃないし、今もそのためにこの仕事をしてる。
けれど、正義感に始まって今はそれにタカヤの事がプラスされてる。
正義感は減らない、でもタカヤへの想いは増え続けてる。
そんな気持ちでこの仕事続けていいのか。タカヤに引きずられて。
なんで俺、こんなあやふやなんだ。
もっとしっかりしないと。
だから、まだ答えは出せない。
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