449人が本棚に入れています
本棚に追加
「ユズル?」
「あ、ごめん。」
つい、考えこんでしまった。
「いや、そろそろ帰るか。」
「ああ。」
俺はその後、少しエリアを変えたりしながら海賊版の調査を続けていたけれど、目ぼしい情報は掴めていない。
タカヤはときどき顔を出して、あれこれ話をして帰っていく。
やはりマナトの話題が多い。
よっぽど気になるんだろう。
もしかして好きなのか?
いや、あの女たらしがありえない。
まあ、好きじゃないにしても俺にしてみれば少々きつい状況だけれど。
女ならまだしも、マナトだったらさすがにへこむよな。
俺は直接マナトとは会ってもいないし、連絡もとっていないけれどタカヤから聞かされる話によると、やはりマナトは隠れてあれこれ動いているようだ。
タカヤにもそのことについては話さないらしいが、タカヤが見る限り何かしているという。
タカヤが忠告したようだが、聞く耳はないようだ。
マナトは頭が切れる。それだけに余計に危なっかしい。
俺からも注意をしたほうがいいかもしれない。
それとも藤原さんに言うべきか。でも、そしたら俺が二人の関係に気が付いていると勘付かれる?
微妙だ。
それにタカヤが言っても聞かないものを俺が言って聞くとも思えないけれど。
取りあえず、先輩として一言注意はすべきだよな。
携帯に掛ける。
「ハイ、お疲れっす。」
「ああ、俺。今いいか?」
「はい、どうしました?」
「会えるか?」
「はい。今日ですか?」
「ああ、俺も今から行くから」
「わかりました。」
「ああ、じゃあ後で。」
メンバー同士なら、どこそことは言わなくても通じる。
事務所に行くと、シンがいた。
「おー、久しぶりだな。今日当番?」
「ああ、ほんと久しぶり。生きてたか?」
まじで1年ぶりくらいだ。
「ああ、なんとか。」
「俺もなんとか。」
シンはにっと笑う。
そうだ、こいつ愛嬌のある奴だったな。
「何、用事?」
「ああ、マナトにちょっと。あいつも来るから。」
「へえ、今なんか抱えてんの?」
「ああ、俺もマナトも。別件だけどな。」
「ふうん」
特に興味がなさそうだ。
「シンは?」
「いや、俺は何も。当番なだけ。」
「そうか。」
最初のコメントを投稿しよう!