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一瞬流れで訊けそうな気がしたけれど、やめておいた。これもメンバーのプライベートだ。
訊いても答えないだろうし。
俺は一応藤原さんに“マナトの動向に注意”とメールしておいたけれど、藤原さん自身が忙しいのではどこまで効果があるか。
返信はなかった。
俺とタカヤで張り付くという手もあるけれど。
まあ、そこまで馬鹿はしないだろう。様子を見よう。
その数週間後、マナトが有力な情報を掴み、事件は発覚。しかしなんらかの圧力があったのか、公にはならなかった。秘密裏に捜査が入り処理されたそうだ。
N高生に出回っていた薬は覚せい剤の一種で、受験勉強目的で使用されていたらしい。問題は配布側の目的。
海外から入って来る一般的なドラッグではなく、国内の医療チームが試験施用目的でばらまいていた。つまり、高校生を実験台にしたわけだ。短期間ならば足が付かないと思ったらしい。本来ならば正規のルートで試験施用されるべきもの。わざわざ隠れて試験をする必要があったというわけだ。それなりの副作用や危険性があるはず。
それ以上の詳しいことは俺たちの耳には入ってこない。
それにしてもマナト、よくそんな情報掴んだな。
かなり無茶をしたんだろう。
この一件、お手柄だけれどそれだけでは済まないかもしれない。
今週は俺の当番。
海賊版の調査はこれといって収穫もないまま一旦打ち切り。
それ以後タカヤとは会っていない。
やはり俺たちのつながりはここだけだ。
今はリホが家出少女の調査に入っているくらいで、他は動いていないようだ。
俺は窓際でたばこをふかしながらぼーっとする。
あー。そーだ、課題出てたっけ。面倒だから明日学校で友達に写させてもらおう。
ドアが開く音。
「お疲れ様っす。」
「マナト。」
「ども。あ、これ差し入れです。いっつも貰ってばっかなんで。」
マナトはコンビニのビニール袋をテーブルに置く。
いや、俺のも貰い物だけど。
「どうした?」
「ああ、ヘルプ頼まれて。」
「え?なんで?今週俺の当番・・・手空いてるし。」
「ああ、たぶん気使ったんですよ。」
「ん?」
「ユズルさんそろそろ受験でしょ。推薦とかだとそろそろ試験結果も響くし。」
「ああ・・・そういうね。」
へえ、そんなこと気使ってくれるんだ・・・藤原さん・・・っていうか、マナトの入れ知恵だな、たぶん。
で、マナトがヘルプってわけね。
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