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「悪いね、俺のために。」
「いえいえ、全然。どうせ暇なんで。」
「で、リホちゃんと待ち合わせ?」
「はい。ちょっと遅くなるとか言ってたんでまだ来ないですけど、行くとこなくってきちゃいました。」
「うん、まあゆっくりしてけよ。」
「どうも。あ、これアイスなんで食べないと溶けますよ、どうぞ。」
「お、サンキュ。」
俺はたばこを消して、アイスを受け取る。
「そういや、この前お手柄だったな。」
「いえ、たまたまです。」
「無茶すんなって言っただろ。」
「してませんって。」
「してるよ。タカヤにも言われただろう?無茶してなんかあっても誰も責任はとってくれねえぞ。自分が痛い目見るだけだ。」
「・・・俺、そうやって守りに入るくらいならこの仕事してませんよ。いえ、他のメンバーにそうしてほしいとかじゃなくて、俺個人としてはってことですけど。そういうふうに余力残して動くくらいならここのメンバーになってません。そりゃ、時と場合によっては手抜きもしてますけど。この仕事始めたのって軽い気持ちじゃないんですよ、俺。ちょっとした掛けみたいな感じなんです。」
「マナト。」
「あ、すいません。つい・・・へへ」
マナトはいつもの無邪気な笑顔で笑う。
これは作り笑顔なのだろうか、それとも本当に笑っているのか。
以前は気にしたことはなかったけれど、最近こいつの本当がどれなのかわからない。
本当に笑っているように自然に見えるけれど、もしかしたら笑顔の仮面なのか。
でも、こいつが本音を話すなんて珍しい。いつも建前を並べてるのに、それだけでも進歩か。
「そっか、掛けね。なんかいろいろ抱えてそうだもんな、おまえ。でもさ、俺とタカヤは単純におまえのこと心配してるだけだから気悪くすんなよ。」
正直いろいろ訊いてみたいと思ったが、きっとマナトは訊かれたくはないだろう。つっこむのはやめよう。話したくなったら自分から話すだろうし。
「はい、ありがとうございます。俺の方こそ勝手言ってすんません。」
マナトは申し訳なさそうにする。
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