迷う心3

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「え・・・アツキさん」 「ん?」 「全部塗るんですか?」 「ああ、今日は大サービスだ。」 「いや・・・ありがとうございます。」 学校が、とも言えず、されるがまま。まあ、今日は土曜だから月曜までに落とせばいいか。 一本だけならそんなに目立たないけれど、さすがに全部はちょっと。 「今日もマリさんとこにチケット置きに行こうと思ってるんです。」 「そうか、この前喜んでたぞ、お前の歌聴けたって。」 「そうですか、よかった。」 「ライブ、いつ?」 「今日ですけど。」 「俺も行こうかな。今日早番だし、久々にお前の声聴きに。」 「え・・・」 アツキさんがにこっと笑う。 「チケットあるか?」 「はいっ。」 うれしい。俺とアツキさんはもともとライブハウスで知り合った。 アツキさんも昔はギターを弾いていて、俺はギタリストだと言ってステージでは歌わなかったけど仲間内ではときどき美声を披露していた。アツキさんがライブハウスにいる姿を見れる。 俺はチケットを渡して、店を出る。 よかった練習しといて。 青と黄色でカラフルに塗られた自分の爪を眺める。 今日のワンポイントは星(スター)だ。 俄然やる気が出てきた。 マリさんの店へ急ぐ。 「あら、いらっしゃい。今日は、普通ね。」 マリさんがきょとんとした顔で言う。 よかった捕まってなかった。アツキさんが何も言ってなかったから大丈夫だとは思っていたけど、いきなりしょっ引かれてるってこともありえる。 「え、ああ、前はちょっと。」 「で、どうしたのー?私に用事―?」 「今日もチケット渡しに来たんですよ。今日のライブなんですけど。」 「ほんと!あ、でも、今日はだめかも、夕方オーナーが来るって言ってたから早くには店閉められないわ。」 「そうですか。今日はアツキさんも来てくれるんです。」 「アツキが?」 「はい。」 「めずらしいわね。ライブハウス嫌煙してたのに。」 へえ、マリさんそんなことまで知ってんだ。 二人って古い仲なのか。 「一応置いてきますね。来れたら来てください。今回はばっちり練習したんで。」
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