迷う心3

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「ごめんな、びっくりしたろ。」 「はい、まあ、それなりに。」 「笑ってすましゃよかったのに・・・できなかった。」 それから少し話をして、俺たちは事務所へは戻らずに家へ帰った。 その日俺の携帯には何度か藤原さんからの着信があった。 けれど、どうしも出ることができなかった。 最終的にメールがきた。 それを確認することさえ恐ろしかったけれど、覚悟を決めてメールを開く。 “マナト、すまない。どうか、元気で。” 予感は的中。 頭の中が真っ白になった。 涙さえ、出ない。 それから、どれくらい日がたっただろう。 時間の感覚さえ曖昧だ。 何日か学校を休んだ。 事務所にも行っていない。 俺が事務所に顔を出さないのでタカヤさんがメールをくれた。 藤原さんは異動になったらしい。 異動後のメンバーとの接触は双方とも一切厳禁。伝言等は新しい担当者を通せということだ。 新しい担当は藤村さんというらしい。 藤原さんに藤村さんとは、なんともひねりのないことだ。 今は学校には通っているけれど、相変わらず事務所には足が向かないし、あちらから連絡もない。 ユズルさんからメールだ。 “来週当番だぞ” そうか、当番か。 事務所には行きたくない。 けど、当番なら行かないと、それともユズルさんに頼んで代わって貰おうかな。 迷っているうちにまたユズルさんからメールが来た。 “俺も行くから、来いよ。” 何か用事かな。 ぼーっと考える。 しばらくして、調査だろうと思いつく。俺の仕事。あんなにやる気があったのがうそのようだ。
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