迷う心4

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取りあえず今日は上がろう。 事務所へ寄って報告書を作ろう。 事務所に戻ると電気が点いている。 誰か来てる。 藤村さんかな。 居たのは、マナトだった。 「マナト。」 「お疲れ様です。」 「ああ。」 「飯ってくっちゃいました?」 「え、まだだけど。」 「よかった。これ買って来たんで一緒に食いませんか。」 テーブルの上のファーストフードの袋を指す。 「ああ、サンキュ。」 やつれたままのマナト、この前よりは声に張りがあるようだが、元のマナトには程遠い。 「調査、どうすか。」 「うん、今日やっと収穫あった。」 「そうですか。ありがとうございます。」 「いいって。」 話しながら食べているけれど、マナトはほとんど食べていない。 食欲ないのか。 「連絡しねえの?」 「え。」 「あのまま会ってないんだろ?」 「禁止されてますから。」 「関係ないよ。そんなの。このままじゃ連絡来るかも、とか思って引きずるんじゃねえの?」 「連絡は来ませんよ、わかってるんです。」 「なんで?」 遊ばれたか? マナトは答えずに俯く。 何か思うところがあるんだろう。 “わかってた”、この前から何度もマナトの口から聴くフレーズ。
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