再生1

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藤原さんから連絡はない。 あるはずがないんだ。 何を期待してるのか。 事務所に一人でいるのはつらい。 ここで藤原さんと一緒に過ごした。 ここに来たのもあなたの紹介だった。 涙が出そうになる。この前まで、泣けなかったくせに、今度はやたら涙が出る。 グッとこらえる。 いきなりドアが開く。 「あ、いたいた。」 リホちゃんが入って来る。 涙目なのがばれないように、瞬きをする。 「どうしたの?」 「近くまで来たんで、今週マナトさんだったなって寄ってみたんです。」 「わざわざ?」 「そう、わざわざです。で、これ、差し入れです。」 リホちゃんはドーナツの箱を差し出す。 「え・・・差し入れ?」 「はい。マナトさん、前にドーナツが好きだって言ってたでしょう?」 「ああ、そうだっけ。確かに、好きだけど。」 「さいきんマナトさん元気ないんだもん。痩せちゃったし。」 「心配しれくれたんだ。」 リホちゃんは深く頷く。 「駄目ですよ、ちゃんと食べなきゃ。健全な精神は健全な肉体に宿るっていうでしょ。」 「うん、そうらしいね。」 そう言っているうちに、自分で箱を開けている。 「マナトさん、どれがいいですか?どういうのが好きかまできいてなかったから、いろいろ買ってきちゃいました。」 「どれでも好きだよ。リホちゃん先にとりな。」 「駄目ですよ。マナトさんのために買って来たんですから先に取ってください。」 相変わらず元気だなあ、リホちゃん。 「ありがとう。じゃあ遠慮なく。」 俺は箱を覗く。 どれにしよう。食欲はないけれど、食べないと悪いし、この様子だと怒られそうだ。 一番オーソドックスなプレーンのドーナツを取る。 リホちゃんはその間に飲み物を準備してくれる。 「ああ、それが好きなんですね。覚えときます。」 「どれでも好きだよ。ドーナツなら。」
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