450人が本棚に入れています
本棚に追加
リホちゃんは俺の隣に座ると、クリームの入ったのを取って頬張っている。
おいしそうに食べるなあ。
あんまりおいしそうに食べるから、なんだか俺も食欲が沸いてきた。
おいしい、久々に食事がおいしいと思った。
「おいしいね。」
「はいっ。よかった喜んでもらえて、もっと食べてくださいね。」
「うん。ありがとう。」
「今日は、出掛けないんですか?」
「ううん。いまユズルさん待ち。ユズルさんが来たら出るよ。」
「そうなんですか。じゃあ、私もユズルさんが来たら一緒に出ます。」
「うん、もうそろそろ来ると思うんだけど。」
少しして、ドアが開く。
ユズルさん登場。
「あ、アホ・・・あ、間違えた。リホ。」
「なんですか、それっ。わざとでしょっ。」
「あ、ドーナツだぁ、美味そう。」
「そんなこという人にはあげませんっ。」
リホちゃんはドーナツの箱のフタを押さえる。
「ちょっと、口が滑っただけだって。」
「口が滑ったってことは、思ってるってことでしょっ。」
「うーん、そういう難しいこと、俺わかんない。」
「とぼけないでくださいっ。」
「腹減ってんだから、一個くらいくれよ~。」
「しょうがないですね。マナトさん、どれがいらないですか?」
「えっ。」
「マナトさんが食べたくないのをこの人に食べさせます。」
「うーんと、俺はチョコレートが好きなんだけど。」
ユズルさんが口を挟む。
「あんたに聞いてないってばっ。」
「ああ、じゃあ、チョコレート。」
俺は面倒なのでチョコレートを指定。
「マナトさん、甘やかしちゃだめですよっ。」
「マナトと俺は無二の親友だからな、アホの入る余地はねーよっ。」
そう言ってユズルさんはひょいっとドーナツを摘まみあげる。
「ああー、ひどーい。」
無二の親友か。まあ、秘密は共有しているけれど。
三人で事務所を出て、リホちゃんとは駅で別れる。
最初のコメントを投稿しよう!