再生1

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「ドーナツってうまいなぁ。」 ユズルさんはしみじみという。 「そうですね。久しぶりに何か食べておいしいって思いました。」 「そうか、じゃあ、明日から毎日食わせてやる。」 ユズルさんはにこっと笑う。 一瞬見惚れてしまった。この人、モテるわけだ・・・。 「いや、さすがにそれは・・・。」 「女の子は気が利くよなあ。」 「そうですね。」 現地付近で別れて調査に入る。 以前ほど熱意がないので、無茶な調査はしないけれどきちんと調査はしている。 少しずつ成果は出ている。 その日で八人すべての顔が割れた。 いつもはそのまま帰るけれど、報告書も溜まっていたし、とりあえず全員の顔が割れたこともあって、一旦事務所に帰って今後の予定を話し合う。 リホちゃんが置いて行ってくれたドーナツを頬張る。 八人の共通点は、皆無。 「うーん。」 ユズルさんが唸る。 「わかりませんね。」 知り得た情報をすべて報告書に上げて、藤村さんの指示を待つことにする。 こういう場合はプロに任せる。 藤村さんからの指示は、とにかくもう少し調査を続けてくれということだ。 調査を続けるけれど、それ以上の進展はない。 ある日、俺は学校帰りの一人の後を尾けていた。 途中八人のうちの三人が合流。 こいつら面識があったのか・・・。 驚きつつ尾行を続ける。 四人は電車に乗り継いで、田舎の無人駅で降りた。 もう辺りは薄暗い。 どこへ行くんだ。 四人はどんどん山の方へ向かっていく。 なにがあるんだ、こんなとこに。 N高の学生が興味を持つようなものがあるのか。 四人は懐中電灯を持っていて薄暗くなった道を照らしている。 準備万端だな・・・。 俺は何も持っていないし、明かりを付けるわけにもいかないので、彼らの明かりを頼りに尾いて行く。 もうすっかり辺りは暗くなって、森の中は真っ暗だ。 薄気味悪い。 突然前方の明かりが消える。 えっ。 焦る。 暗闇の中を歩いて来たので、ある程度目は利くようにはなっていたけれど、それでも真っ暗だ。
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