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「ドーナツってうまいなぁ。」
ユズルさんはしみじみという。
「そうですね。久しぶりに何か食べておいしいって思いました。」
「そうか、じゃあ、明日から毎日食わせてやる。」
ユズルさんはにこっと笑う。
一瞬見惚れてしまった。この人、モテるわけだ・・・。
「いや、さすがにそれは・・・。」
「女の子は気が利くよなあ。」
「そうですね。」
現地付近で別れて調査に入る。
以前ほど熱意がないので、無茶な調査はしないけれどきちんと調査はしている。
少しずつ成果は出ている。
その日で八人すべての顔が割れた。
いつもはそのまま帰るけれど、報告書も溜まっていたし、とりあえず全員の顔が割れたこともあって、一旦事務所に帰って今後の予定を話し合う。
リホちゃんが置いて行ってくれたドーナツを頬張る。
八人の共通点は、皆無。
「うーん。」
ユズルさんが唸る。
「わかりませんね。」
知り得た情報をすべて報告書に上げて、藤村さんの指示を待つことにする。
こういう場合はプロに任せる。
藤村さんからの指示は、とにかくもう少し調査を続けてくれということだ。
調査を続けるけれど、それ以上の進展はない。
ある日、俺は学校帰りの一人の後を尾けていた。
途中八人のうちの三人が合流。
こいつら面識があったのか・・・。
驚きつつ尾行を続ける。
四人は電車に乗り継いで、田舎の無人駅で降りた。
もう辺りは薄暗い。
どこへ行くんだ。
四人はどんどん山の方へ向かっていく。
なにがあるんだ、こんなとこに。
N高の学生が興味を持つようなものがあるのか。
四人は懐中電灯を持っていて薄暗くなった道を照らしている。
準備万端だな・・・。
俺は何も持っていないし、明かりを付けるわけにもいかないので、彼らの明かりを頼りに尾いて行く。
もうすっかり辺りは暗くなって、森の中は真っ暗だ。
薄気味悪い。
突然前方の明かりが消える。
えっ。
焦る。
暗闇の中を歩いて来たので、ある程度目は利くようにはなっていたけれど、それでも真っ暗だ。
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