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4月9日、月曜日。
昨日までの雨は何処に行ったと言わんばかりの雲ひとつない天気。
まるで今日という日を祝っているかのような太陽を眺めて、男は小さく舌打ちをした。
黄泉ヶ市市立現蝉学園高等科(よみがいちしりつうつせみがくえんこうとうか)
重々しい字体で書かれた表札を眺めながら、校門を通り抜けると後ろから声が飛んできた。
「おーい、かーすーみー」
大きく手を振り、満面の笑みでこちらに向かってくる男がいた。
『かすみ』と呼ばれた男は振り返って声の主を確認すると、何事もなかったように再び歩き始めた。
「ちょ、ちょっと待てよー」
無視された男は、速度を上げて勢いあまって通り過ぎると立ち止まったその場で膝に手を置き息を整えだした。
「駿太(しゅんた)。普段から運動してねぇから、そうなんだよ」
ニヤニヤながら息を整えている肩をポンポンと叩いた。
「騒がしいと思ったら、やっぱり駿太だったか」
不意に後ろから声を投げられ振り返ると、小柄な女の子と細身で長身の眼鏡をかけた男の子が立っていた。
「架純(かすみ)君もおはよう」
「おう、藤士朗(とうしろう)に奈都子(なつこ)か。やっぱり変わり映えしねぇなぁ」
架純はいつものメンバーがそろったのを確認すると安心したかのようにつぶやいた。
「そりゃそうよ。うちの学校は小学校から高校までエスカレーター式なんだから、クラスメイトもぜーんぶ知った顔じゃない」
「まぁ、たまに夏休みデビューとかで雰囲気変わる人はいますが・・・」
「藤士朗。それ、意味違うし」
奈都子と藤士朗の掛け合い漫才のようなやり取りに架純は肩に乗っていた緊張が解けていくのを感じていた。
やんちゃでバカだが情には厚い春日井 駿太(かすがい しゅんた)、メンバー1の博学眼鏡だがどこか抜けてる冬野 藤士朗(ふゆの とうしろう)、メンバーの紅一点だが、誰よりも男勝りな夏原 奈都子(かはら なつこ)。秋橋 架純(あきはし かすみ)を含めた4人は小学校からの仲良しグループなのだ。
「お前ら、早く教室に行けぇぇ!!」
「げっっ!!ゴリだ!!!お前ら急げ!!!!」
校門のところから竹刀をバンバン地面に叩いて走ってくるジャージ姿の教師を見るや否や4人は走り出した。
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