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教室では仲のよいグループ同士で集まり、髪を切っただの制服似合ってるよとか雑談を繰り広げている。しかし、あるグループだけは少し違っていた。
「肝試し?」
奈都子は素っ頓狂な声を出して、駿太を見つめた。
駿太は浅黒く焼けた肌とは正反対な真っ白な歯を見せながら、ニカッと笑って見せた。
「そう!樹海に行くんだよ!あそこは絶対に何かあるって」
駿太が言う樹海とは架純達が通う高校のある常世町(とこよちょう)のほぼ中央に存在する広大な森のことで、不思議なことにその森には一切の手は加えられずに森の南北を走る国道は森を迂回するように作られている。おかげで、その国道を境に東と西の地区に別れている。
「確か、強力な磁場がはたらいていて方向感覚がおかしくなると聞いたことが・・・」
「富士の樹海みたいに広かったらあれだけど、うちのは樹海っていうよりただの森でしょ、あれは」
神妙な面持ちで話す藤士朗にすかさず奈都子が異論を唱えた。
「だけど、開発の為に調査で入った人たちが行方不明になって3ヶ月。今も見つかってないのは事実では?」
「それは・・・」
いつもの藤士朗と奈都子の掛け合い漫才に耐え切れなくなったのか、駿太は話の矛先を架純に向けた。
「なぁ?絶対なんかあるって!!行ってみようよ~」
「・・・そ、そうだな」
架純はしぶしぶ返事をした。あまりにキラキラとした瞳で語りかけてくる駿太に断りきれなかったのだ。
「よし、じゃあ今日の9時に校門前に集合な♪」
大好きなおもちゃを買ってもらった子供のようにキャッキャとはしゃぎながら廊下を走り去る駿太の背中を3人は呆れ顔で眺めた。
架純はひとつ小さなため息をついて、覚悟を決めることにした。
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