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私は警察署の自席でゆっくりと背を伸ばした。
黒狼は捕まえて事件は終わったかに見えたが、まだ本当の黒幕がいる。
戦いの準備は進めなければいけないが、かといって他の仕事を留守にするわけにもいかない。
警視庁ハイテク犯罪対策総合センター、高度情報技術犯罪取締班。
そこが私の警察での居場所。
……時代は変わった。
ハイテク犯罪の発生数は日増しに増えていく。
しかし、法整備はいつまで経っても追いつかず、私達は犯罪なのかどうかすらも怪しい事件を常日頃から追い続けなければいけない。
「おーい、蛇の目」
班長が私を呼ぶ。
蛇の目とは、ここでの私のあだなだった。
鋭い目付きの私を、名字の蛇嶋から取った蛇を使って例えたものだが、それは私だけのあだなではない。
蛇嶋義文――私のお父さん。
どんな些細な情報も見逃さずに、真実に辿り着く。全てを見透かすお父さんこそ、蛇の目に相応しい警察官だった。
私は、お父さんに少しでも近づけたのだろうか。
「はい、今行きます」
私は席を立って班長の机の前で直立不動の姿勢を取った。
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