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「新しい事件だ。任せられるか」
「はい、わかりました」
私は即答するが、内心はまた仕事が増えるのかとため息でもつきたい気分だった。
「くれぐれも言っておくが……以前のような失態は防がねばならん」
班長が苦虫を噛み殺したような表情で告げる。
「もちろんです」
私は無表情を装った。班長の言う「以前のような失態」がなぜ起きたかを知っているからだ。
恐らく、その原因を知っているのは私だけだろう。
……その原因が警察という組織の中にあるなんて、今の状況じゃあ口が裂けても言えやしない。
「詳しくは調書に目を通して進めてくれ」
「はい」
私は班長に一礼して、自席に戻って調書を読み始める。
そこで今度は本当にため息をついた。
「やれやれ……よりによってここでの事件か」
今度の事件、私のよく知っている場所での事件だった。
――モバイルファンタジア。
そこで起きた、前の事件。忘れようにも忘れられるはずがない。
なぜなら……。
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