2章 infinity-zero

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9月18日(日)続き 「私、前に黒狼さんからのメールで、持たざる者って言われたんです。色んな意味があると思うんですけど、才能とか能力とか、そういう意味でもみんなより劣っているのかなって、正直に思います」 「……持たざる者、ね。なんとも皮肉な言い回しをするじゃないの」 黒狼という言葉に反応したのか、にょろさんはそう悪態を付きます。 「盗聴会との戦いの時に私が出来たのは、周りの情報を調べたりするような地道な事ばっかりでした」 「そうよね」 ……私のやってきた事が誰にでも出来るのか、私にしか出来ない事なのかと聞かれたら、私は誰でも出来ると答えるでしょう。 みんなが忙しいから、そういう地道な作業をするから仲間に入れて欲しい……そんな答えも考えましたが、それじゃあ絶対ににょろさんは納得しない。 にょろさんが求めているのは、私じゃなきゃいけないって点を精一杯アピールした答え。 誰でもいいって事は、他でもいいって事だから、私じゃなくちゃダメな事って何だろう――それを昨夜、必死で考えていました。 「持たざる者の私は、前線に出て頑張るような事は出来ないのかもしれません。だけど、後方支援でもみんなと培ってきた友情があるし、私もみんなの事を他の人以上に理解してる。あとあと……盗聴会との戦い方だって、他の人よりもわかってる!」 にょろさんがゆっくりとした動作で私を見つめました。 「要するに――後方支援の即戦力って事?」 ……ああ、長々と喋ってはみたものの、にょろさんに端的にまとめられるとそれだけかとも感じます。 でも、考えた事に間違いがあるわけじゃない。私は大きく頷きました。
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