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9月19日(月)続き
「知っての通り、おれは元刑事だ。刑事をやめて始めたカフェだったが、これが面白いんだ」
「……面白い、ですか」
「昔は捜査会議でコーヒーを飲むだけだった。中身はインスタント。豆にこだわり、挽き方にこだわり、淹れ方にもこだわる……そんな事は考えたこともなかった」
マスターが言いたい事はなんとなくわかる。
「それは、マスター自信に才能があったからですよ」
「うまいコーヒーを作る才能か? それは何とも未知数な才能だな」
「正直に言って下さい……私に、才能なんてものがあると思います?」
「それは何の才能かによるけどな、にょろのような刑事になれるか? という質問ならノーだろうな」
「……やっぱり、そうですよね」
「勘違いするな。にょろのような刑事なんて、誰も求めちゃいない。それはにょろが1人いれば十分だ」
みんなが何を求めていたとしても、やっぱりそれに応えられる自信なんてないし、そんな才能が隠れているとも思えません。
「まぁ、そう焦って結論を出す必要なんてないさ。ここにはゆっくりした時間が流れている」
緊張でガチガチだった状況とは今は違う。改めて店内を見れば、そこはすごく居心地の良い場所なんだってわかった。
「……よかったら、明日もここに来てくれないか。たぶん、面白い来客と会えるはずさ」
まだ、マスターは何かを考えているのかな?
面白い来客なんて言われて、私が興味を示さないわけがない。私は「はい」とだけ答えて、目の前のコーヒーの香りを楽しんだ。
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