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「何を考えてるんですか?」
「ひゃあっ」
ビックリしたのは急に耳元で囁かれたせいだけじゃない。
袴田課長のことを考えてたって後ろめたい思いがあったせいに違いなかった。
あまりに動揺して慌てて体を起こそうとしたらガッチリ上から押さえ込まれた。
視界が遮られてるから分からなかったけれど、いつの間にか宗助さんはずいぶんと近くにいたらしい。
「何か後ろめたいことでも?」
少し低めの宗助さんの声は獲物をいたぶる猫のように楽しそうで、私は嫌な予感で心臓をひやりと冷たくすることしかできない。
やだ。やだ。絶対嫌だ。
宗助さんといるのに課長のこと思い出しただなんて絶対にバレちゃダメだ。
宗助さんが私の気持ちを疑うなんてもちろん思わないけれど。
……だってどんな意地悪が待ち受けてるか分かんない!
私が焦れば焦るほど、宗助さんの声は含みを含んで楽しそうになっていく気がした。
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