第1話 ロイヤルスイートな夜【瑞希Ver.】

22/57
前へ
/282ページ
次へ
そしてやっぱりこの人を愛してると再確認するんだ。 目を閉じてじんわりとこみ上げた涙を飲み込んだ。 「……入浴剤入れてもいいなら」 そんなことを言ってしまったのは、あの時の宗助さんを強く望む思いが甦ってしまったから。 あの日の切ない思い出を今日、楽しい思い出に塗り替えたいと思ったから。 「せっかくのバラ風呂が香らなくなりますよ」 「え?」 宗助さんは苦笑しながらガラスの奥のバスタブを指差した。 透明なガラスの向こうには十人くらい入れるんじゃないのってサイズの丸いジャグジーがあって、よく見ると赤と黄色のバラの花びらがこれでもかってくらいの密度で浮かんでいた。 「なにコレ! すっごい!」 思わず興奮して服のままバスタブに駆け寄る。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36177人が本棚に入れています
本棚に追加