第1話 ロイヤルスイートな夜【瑞希Ver.】

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「シャンパン飲まなかったんですね」 私が手に持っているお水のグラスを見て宗助さんが笑う。 おそろいのバスローブを着てることがなんだかとても照れ臭かった。 「も……、もうお酒は抜けました」 だから宗助さんの方を見られずに大きな窓に近寄って夜景を眺めるフリをする。 明るい照明でガラスにはくっきり冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す宗助さんの姿が映っていた。 ゆっくり私へと近づいてくるその姿を確認しながら、また心臓がドキドキと踊り出す。 もっと近くに来て欲しい。 その腕に、首に、触れたいと思う。 だけど思うほどにそんな自分が恥ずかしくて言えなくなる。 相変わらず、上手く甘えられない自分をもどかしく思ったり。
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