第1話 ロイヤルスイートな夜【瑞希Ver.】

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そんな時だった。 「袴田の会社の業績は好調みたいですよ」 宗助さんが不意に課長の名前を出したのは。 「え……?」 さっきの私の思考を読んだような言葉に思わず振り返る。 驚きと戸惑いで私はめちゃくちゃに複雑な表情をしていたと思う。 何を言っていいのか判断しかねていると、宗助さんは困ったように微笑んだ。 こんな表情をしたら私が課長のことが気になって仕方がないと言っているようなものだ。 だけどこんな時、上手く取り繕えるほどデキた女じゃないから。 私は黙ったまま宗助さんが口を開くのを待つことしかできなかった。 「大学時代の知り合いや、前職で実力を買われた相手から仕事は取れてるようです。でも……」
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