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昔々あるところに、一匹の狐がおりました。運よく長生きをしたその狐は妖狐となりましたが、だからといって人を騙して喰らうことはしませんでした。
なぜなら、妖狐は人間の怖さを知っていたからです。妖になりたてで大した妖力がないこともあって、人間に手を出せば容易く殺されてしまうことは想像に難くなかったのでしょう。
そもそも、妖狐は人を喰らうことで自らの妖力を高めようとも思っていませんでした。戦乱の世を見てきた妖狐は、争いが恐ろしかったのです。
だから食うに困って人里で盗みを働くにしても、目を付けられないように少しだけ貰うようにしていました。
「ふむ、妖狐ですか」
そんなある日、人間が一人山に分け入って来ました。どうやら旅の僧のようです。
彼はどんなに隠れても正確に妖狐を追って来ました。もし追いつかれでもしたらすぐに殺されてしまう。妖狐は必死で逃げましたが、その努力むなしく追い詰められてしまったのです。
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