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『ご乗車ありがとうございました。まもなく目的地に到着します。お忘れ物に気を付けてください』
大原恵美はバスの中で微睡んでいるところをアナウンスの声で目を覚ました。
―――いけない。眠ってしまった。
しかし、それは仕方のないことだ。
なぜならこのバスは朝の6時に彼女の実家を出発し、今は夜の7時。
途中に休憩を挟んでいたが、彼女は十二時間くらいバスに乗っていた。
寝てしまうのも無理はない。
その証拠に彼女の隣にいる女の子はアナウンスがどうした、と言わんばかりに眠り続けている。
「愛子。おきて。もうすぐつくわよ」
彼女は隣の席にいる女の子、胡宮愛子を起こそうとする。
しかし、よほど深い眠りの中にいるのかモゾモゾ動くばかりで起きる気配がない。
「早くおきなさい。でないと………」
何度呼びかけてもおきないのでシビレを切らしたのか彼女は愛子のほっぺたを引っ張りはじめた。
柔らかくてきもちよかったのか、愛子を起こすためか彼女はほっぺたを引っ張り続ける。
「ん……うぅん……………ふあぁ………………ふぁれ、ふぉふぉはろこれす」
どうやらさすがに目を覚ましたようだ。
しかし恵美がほっぺたを引っ張っているせいでまともにしゃべれていない。
「おはよう愛子。ここはバスの中よ」
「バスの中ですか。あれ? なんでバスの中に……………ああ、そういえば朝からずっと乗っていたですね」
「もうすぐ到着するみたいだから荷物まとめときなさいよ」
そう言うと彼女は自分の荷物をまとめはじめた。それに習い愛子も自分の荷物をまとめだす。
二人がそうしているとバスはトンネルの中に入っていった。このトンネルを抜けるといよいよ彼女たちの目的地に到着する。
そう、彼女たちの目的地。『学園都市』に。
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