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「んっ…………ふぅ……」
バスを降りたところで彼女、大原恵美(オオハラ エミ)は大きく伸びをした。
長い間バスの中にいたので、体をほぐしているのだろう。
彼女の後ろには小学生のころからいつも一緒にいる親友、胡宮愛子(クルミヤ アイコ)がついてきていた。
彼女たちの乗っていたバスには他にもたくさんの乗客がいたがその中での彼女たちは非常にめだっていた。
しかし、それは仕方のないことだ。
恵美は女性のなかでは背が高いほうで、その大きさは男性にもひけをとらない。
大きいといっても横幅はけして広くなくどちらかと言えば細い方だ。
彼女の体型を一言で表せば『モデル体型』がピッタリだろう。
実家が合気道の道場をやっているせいか佇まいも落ち着いている。
大人のキレイさと子供の可愛らしさの中間くらいの顔立ちに腰まである長い黒髪も相まって大和撫子という言葉の似合う美少女だ。
愛子は恵美とは反対にとても背が低い。
小学生に間違えられても文句は言えない。
彼女は祖父が白人のクォーターだ。
そのため肌の色は周りに比べて白く、肩の位置に揃えられた髪は若干ウェーブのかかったブラウンになっている。
色白で儚げなイメージがぴったりの彼女はまさにビスクドールのようだ。
ただでさえ目立つ二人が一緒にいると目立つのは必然だろう。
さらに彼女たちの場合、身長差があるので余計に目立ってしまっている。
「十六学区第三高校に入学する生徒はこちらに集まってください」
「第一高校はこっちねー」
「第二高校の奴はこっちだ」
バス降りてしばらくすると拡声器で何か言っている声が聞こえてきた。
バスを降りた人たちは拡声器の声にしたがって三グループに分かれていく。
「エミちゃん。アイちゃんたちはどの人のところに行くですか?」
「第三高校だから、あの女の人ね」
「了解ですっ」
そう言うと愛子は走って行ってしまう。
それを恵美が慌てておいかける。
一番丁寧な言葉遣いの拡声器をもった人のところへむかった。
「それでは私についてきてください」
拡声器を持った、おそらく先輩と思われる大学生くらいの女性は第三高校に入学予定の生徒がそろったのを確認するとそう言って歩きだした。
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