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「……時成ぃぃいいい!!!」
バァン、と勢いよく扉を開けると、時成は飲んでいたお茶を勢いよく噴き出した。
「ど、どうした結季!すごい顔だぞ!?」
すごい顔じゃない鬼の形相だ、という言葉を飲み込み、私は時成の胸倉を掴んだ。
「貴様、女に飽き足らずついに男をお持ち帰りか!!何を考えてる!死にてぇのか?!死にてぇんだな!?」
「は?!…わっバカ!式鬼は反則だぞ!!」
式鬼を呼ぶため印を結び始めた私の手を、時成が急いで掴んだ…その時。
「あのー…」
「きゃああ来たぁ!……って…え、貴方は」
「こんばんは、結季くん。
…と言っても、さっき会ったばかりだよね」
「か、神主さん……」
居間に、風呂上がりでいい香りを漂わせ和服姿で現れたのは、先程まで会っていた、神主さんだった。
え、ていうか…なんで神主さんが私の家に…?
なんで風呂入ってんの?
つーか、私より先に居るってどゆこと?
「あーワリィワリィ!言うの忘れてた!
お前に客だ、結季」
「知ってたのかよっ!こんのバカ成!!」
「あ゙だ!!
つーか、お前…大人の男の裸見たからって恥ずかしがるなよ~。俺の見慣れてんだろ」
「黙れこのセクハラ野郎。
つーか、テメェのたるんだ腹見ても何とも思わねぇよハゲ」
「たるんでないもん!それにハゲてません!!」
もん言うな、もんて。
そう思いながら本気で軽蔑の眼差しを向けると、時成は部屋の隅に行っていじけた。…ちょっとやり過ぎたか。
「すみません、神主さん。私、お風呂に入ってきますので待っていてくださいね」
「うん。行っといで」
構ってオーラを醸し出しているハゲ成を無視して神主さんに笑いかけると、私は静かに部屋を出た。
やっぱり神主さんの笑顔は癒されるなぁ。
見た目も若いからか、"お兄ちゃん"って感じがする。
だから…風呂場で見たモノは記憶から抹消しよう。
ぐっと拳を握り、私は一人深く頷いた。
「赤くなっちゃって…。結季くん、可愛いですね」
「だろ?普段は無愛想で毒舌なんだけど、変なところでウブで純情なんだよアイツ」
「まぁ、スレてない証拠ですよ。
それに、仕事をしている時は、私に対してすごく礼儀正しかったですよ」
「……猫かぶりもうめぇからな、アイツ」
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