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あの火事から六年という月日がすぎていった。
当時十才だった牧原 柚紀は十六歳、高校一年生になっていた。
「よっ!牧原!」
「こんにちは…」
肩をたたかれ振り返ると、美術部の先輩である春野 百合がいた。さっぱりと短い髪が窓からさす光があたり、輝いていた。男勝りでいて美人な柚紀の先輩。
「今日は美術部員総出で校外へ写生へ行くぞ!」
「はい」
「絵の具を忘れるなよっ!」
「分かってますって」
子供扱いされていることに嫌気がさしてきた柚紀の髪を、百合はくしゃくしゃと撫でた。
「うわっ。先輩?」
「いや~。可愛いね、ゆずちゃんは」
「ゆずちゃんって呼ばないで下さいよ」
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