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自分はと言えば六年前と変わらない、どこを見ているのかすらも自分で分からない、空虚な顔をしている。
「なんかゆずちゃんって最初からわけありな感じしてたよね。何があったのか分からないけどさ、何かあったら私にいいなよ?」
百合や美術部員には六年前のことを話していない。その必要がないから。
「はい」
柚紀は嘘をついた。
再び百合は柚紀の頭をくしゃくしゃと撫で、んじゃ、と自分の教室へ帰っていった。
「もう秋だな…」
知らない間にそんなことを呟いていた。
あの時も夏がわずかに忘れられた、まだ暑さを感じる秋だった。
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