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歩くのがのそのそと亀のようにはいかないが、遅い悠はいつも早めに家を出て駅で友達と合流する。
「ゆーちゃん!」
遠くから呼ぶのは
「……母さん」
悠の母。
「ゆーちゃん!」
手を振って名前をちゃん付けにして呼ぶ母に恥ずかしい悠はもうスピードに戻って来た。
「……何!?」
「何じゃないわよ、ほらママ特製のお弁当!」
母は悠が産まれてからずっと「ゆーちゃん」や「ゆうちゃん」だった。やめてと言ってもやめない母に折れてしまった。
「……ありがとう」
「ゆーちゃんたら、お弁当持って行かないで無表情のまま出て行くんだもん」
おかしかったとばかりに笑う。
見てるだけじゃねぇで……
「とめてよ……」
「可愛かったんだもの」
有り得ない。
「はい、行ってらっしゃい」
悠は母の笑顔と一緒にお弁当を受け取ると早足になっていない早足でその場を去り、駅に向かった。
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